2016年9月16日金曜日

「蚊」のはなし

 母はパーキンソン病を発症しているので、動作が恐ろしく緩慢で、動きが鈍く遅い。小さな作業でも何倍も時間がかかる。
 朝のゴミ捨て、植え込みから落ちる葉っぱや、(自宅前だけ)歩道のゴミ掃除を日課としている。家の中での家事(食事を作ったり、皿洗いしたり、洗濯物を干したり、掃除したり)は私が仕方なくほとんどやっているが、屋外作業は嫌いではないらしく、朝になると自発的に作業にでる。たいしたことはやってなさそうだが、体が動く限りは動かないと、余計にだめになるようだ。

 動かないと、余計に動かなくなる、と言って毎日、午後からあちこちへの外出に精を出すので、じゃあ家事もっとがんばって自分でやればいいじゃん、と言ったら、「そんなことしたらストレスたまっちゃうもん。」
 手がうまく動かないので無理はないが、そうスパッと言われると、日々地道に家事をこなすこちらが、いやな仕事を押し付けられたような、そんな気分であった。(そういう悪気のなさが、母に疑われるアスペルガーの症状でもあるらしいが・・)

 で、動きがあまりに遅く、玄関の出入りをするのも遅いため、ドアが閉まるまでにひどく時間がかかる。そのため、蚊が入ってきてしまうのだ。最多で今のところ一日に二匹だが、一度入ってしまうと、家の中を飛ぶその存在感がすごい。黒くて目の前をすいっ、と横切るのだが、パチン!とやってもすいっと逃げ、電撃ラケットをふりかざすにも、すでに逃げてしまった後だったりで、なかなかうまくいかない。そのくせ、忘れたころ、目の前をすいっ、と飛んでいるのである。